S&P500とは?初心者のための資産形成|世界一の米国経済へ長期投資しよう

S&P500とは?初心者のための資産形成|世界一の米国経済へ長期投資しよう

投資を始めようとすると「S&P500」という言葉を必ず目にします。しかし、具体的にS&P500がどういった指標かわからない方は多いです。この記事では、世界で最も注目されている株式指数であるS&P500の歴史や重要性、投資方法を詳しく解説します。

専門用語の解説もしているので、株の初心者でもS&P500の知識と投資方法を身につけられます。

S&P500の概要

S&P500は、米国株式市場を代表する株価指数です。株価指数は、たくさんの会社の株価を平均して、株式市場全体がどれくらい上げ下げしたかを見るためのモノサシというイメージです。

S&P500は米国経済全体を把握する指標

S&P500は、時価総額(企業の値段)が大きい米国の企業上位500社の株式で構成される指数です。米国の格付け会社であるスタンダード&プアーズ(S&P)社が米国の企業上位6,000社の株式から選別・構成しています。

選ばれた500社の株式を時価総額加重平均方式(※)で計算し、その数値によって株式市場全体の動きを反映することができます。

500社の中には、技術や金融、ヘルスケア、エネルギーなど多岐にわたる業界の企業が含まれています。いろいろな業界の企業をカバーしているため、S&P500をみれば米国経済の全体像の把握が可能です。

以下のように、シンプルな形で米国経済全体の上昇と下降を把握できます。

  • S&P500が上がっている→米国経済全体が上昇
  • S&P500が下がっている→米国経済全体が下降

スタンダード&プアーズ(S&P)社の現在の社名は「S&Pグローバル社」です。S&P500以外にも、政府が発行する国債や企業の社債の利払いや償還能力について、財務調査などを通して評価しています。

※ 時価総額加重平均方式とは、大きな会社の株価が指数全体に強く反映される仕組みを指します。

S&P500の歴史

S&P500の誕生は1923年。誕生から53年後の、1976年にS&P500を基準にした個人向けの金融商品が生まれました。そこまでの経緯は下記のとおりです。

  • 1923年:スタンダード&プアーズ(S&P)社の前身となる会社が、233社の株価をまとめた初の米国株価指数を作る。この指数がS&P500の元となる
  • 1926年:S&P500以外にも指数が生まれ、その数は90種ほどに増える
  • 1941年:現在のスタンダード&プアーズ(S&P)社が誕生する
  • 1957年:「スタンダード&プアーズ500株価指数」(S&P500)が公開される
  • 1968年:全米産業審議会がS&P500を指標として採用する
  • 1976年:S&P500を基準とした初の個人向け金融商品が誕生する

1923年の誕生当初、米国株価指数は経済学者や市場アナリストが経済を読むための道具のひとつでした。個人が投資できるS&P500関連商品はまだ存在しません。

1968年に、全米産業審議会がS&P500を指標として採用。「米国株式市場全体をみるための主要指数」としての地位が確立されます。

1976年にS&P500を基準とした個人向けの商品が登場。以降、多くの投資家がS&P500を原型にした金融商品の購入が可能になりました。

全米産業審議会とは、アメリカの経済団体や労働組合などで構成される非営利の民間調査機関。消費者信頼感指数、景気先行指数、求人広告指数などの重要な指標を発表しています。

S&P500の長期的なパフォーマンスとシミュレーション

S&P500は、個人向け商品が生まれてから、さまざまな経済上のイベントを乗り越えながら現在も上昇しています。以下に、S&P500に大きな影響を与えた有名な経済イベントを抜粋しました。

1987年:ブラックマンデー
概要:1987年10月19日、世界的な株式市場の大暴落が発生し、1日でS&P500は約20%下落。この大幅な下落はブラックマンデーと呼ばれている。
影響:短期的には大きな混乱をもたらすが、その後、数年間で市場は回復。
1990年代後半:ドットコムバブル
概要:インターネット企業の急成長に伴い、S&P500は急騰。テクノロジー株が指数の大部分を占める。
影響:投資家の熱狂と過剰な期待により、テクノロジー関連株が大きく値上がり。
2000年:ドットコムバブル崩壊
概要:ドットコムバブルの崩壊後、市場の調整によりS&P500は大きく下落。
影響:多くのテクノロジー企業の株価が急落し、投資家に大きな損失をもたらした。
2007~2008年:リーマンショック
概要:サブプライムローン問題を発端とする金融危機の期間中、S&P500は約50%下落。
影響:S&P500を1,000万円分持っていた場合、500万円になるほどの大きな下落で、世界中の市場に大きな影響を与える。
2013年:リーマンショックからの回復
概要:リーマンショック以前の最高値を超えてS&P500は回復。
影響:市場は再び成長軌道に乗り、多くの投資家が利益を取り戻す。
2020年:COVID-19パンデミック
概要:新型コロナウイルスのパンデミックが発生した時、S&P500は大きく下落、その後急速に回復し、過去最高値を更新。
影響:短期間での大幅な下落と、その後の急速な回復を果たす。

S&P500は、下落と回復を繰り返してきました。1976~2024年までの約50年間の上昇率を平均すると、年間で約7~10%ずつ上昇しています。

過去50年間の平均上昇率を参考にし「S&P500を保有し続けた場合」と「貯金し続けた場合」をシミュレーションしました。積立額は毎月5万円。S&P500の年利率は7~10%のあいだをとって8.5%で固定しています。

投資方法(年利)S&P500積立投資(8.5%)銀行貯金(0.02%)元金
12か月目62万3,070円60万55円60万円
10年目924万9,864円600万5,955円600万円
20年目3,019万2,353円1,202万3,936円1,200万円
30年目7,760万7,959円1,805万円3,968円1,800万円
40年目1億8,496万985円2,409万円6,074円2,400万円
毎月5万円ずつ積立/年利8.5%で想定

S&P500への投資は、単純な貯金と比較すると、40年間後には約7.6倍の金額になっています。あくまでシミュレーションですが、S&P500の運用開始から約50年の過去の実績を反映しているため、信頼性は高いです。

投資は未来がわかりません。表の金額を下回るかもしれませんし、上回る可能性もあります。未来が読めない中でも、最も現実的な「平均値を使ったシミュレーション」が表の数字です。

S&P500の構成と選定基準

S&P500を構成する銘柄は、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が厳しい基準で選定しています。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社は、S&Pグローバル社の関連会社です。構成する銘柄のリストは常時公開されており、誰でも閲覧可能です。

S&P500は四半期ごとに見直されます。業績や市場価値が低下した企業は除外され、業績や市場価値が高い企業が新たに組み入れられます。

S&P500の選定基準

S&P500に選ばれるのは、以下の厳しい基準を満たした企業です。

  • 米国上場株:米国の株式市場に上場している企業である
  • 時価総額:企業の時価総額が一定基準を超えている
  • 高い流動性:株式が多くの投資家によって頻繁に売買されている
  • 財務健全性:企業が堅実な財務基盤を持っている
  • 長期的魅力:持続的な収益成長、強力な競争力、優れた経営、トレンド対応力などがある
  • 業種の多様性:さまざまな業種から企業が選ばれ、全体としてバランスが取れている
  • 浮動株が50%以上:株式の50%以上が一般投資家に売買されており、企業関係者による所有が過度に高くない
  • 収益と財務情報の透明性:企業は四半期ごとに収益や財務情報を公開する必要がある
  • その他の基準:成長性、投資家の関心度など、さまざまな事情を考慮する

上記の基準を満たした企業が常時入れ替わり続けて、S&P500の長期間の安定した成長が実現しています。

S&P500の構成業種

S&P500に組み込まれている業種は、大きく分けて11種です。

業種概要代表的な企業
情報技術(IT)ソフトウェア、ハードウェア、ITサービスを提供する企業アップル、マイクロソフト
ヘルスケア医薬品、医療機器、ヘルスケアサービスを提供する企業ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザー
金融銀行、保険会社、投資会社などの金融サービスを提供する企業JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス
コミュニケーション・サービステレコミュニケーション、メディア、エンターテインメント企業アルファベット(グーグル)、フェイスブック
一般消費財自動車、アパレル、レジャー用品などの耐久消費財と非耐久消費財を提供する企業アマゾン、テスラ
資本財工業製品、建設機械、エンジニアリングサービスを提供する企業ボーイング、キャタピラー
生活必需品食品、飲料、家庭用品、パーソナルケア製品を提供する企業プロクター・アンド・ギャンブル、コカ・コーラ
エネルギー石油、ガス、エネルギー設備を提供する企業エクソンモービル、シェブロン
公益電力、ガス、水道などの公共サービスを提供する企業デューク・エナジー、ネクステラ・エナジー
不動産不動産開発、管理、投資信託(REITs)を運営する企業アメリカン・タワー、サイモン・プロパティ・グループ
素材化学製品、建設資材、金属、鉱業製品を提供する企業ダウ、デュポン

時価総額が大きな企業のS&P500全体を占める割合は大きいです。時価総額の大きいトップ10銘柄でS&P500全体の約20%を占めます。

S&P500と他の主要指数との比較

S&P500以外の有名な株式指数は下記のとおりです。

  • ダウ平均株価(米国)
  • ナスダック総合指数(米国)
  • FTSE100種総合株価指数(英国)
  • 日経平均株価(日本)
  • 上海総合指数(中国)

米国内の指数、米国以外の指数など複数あります。主要な指数をS&P500と比較して紹介します。

S&P500/ダウ平均株価/ナスダック総合指数を比較

S&P500と同じく米国内の株価指数として有名なのが、ダウ・ジョーンズ工業平均ナスダック総合指数です。

ダウ平均は30社の大企業に焦点を当てた指数で、ナスダックはテクノロジー関連企業が多く含まれる指数です。

S&P500ダウ平均ナスダック
銘柄数500社30社約3,400社
選定する会社S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社ナスダック社
算出方法時価総額加重平均
(時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい)
株価加重平均
(株価の高い銘柄の影響を受けやすい)
時価総額加重平均
(時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい)
業種多様な業種をバランスよくカバー。米国経済全体の動向を反映。多様な業種をバランスよくカバー。米国経済全体の動向を反映。ハイテク株中心
特徴包括的・米国市場の代表伝統的・歴史的新興企業・ハイテク関連
配当金中程度高め無配当・低配当
価格の変動中程度比較的安定比較的大きい
過去5年間の成長率
(2024年6月時点)
+83.88%+48.44%+117.37%

過去5年間では、ナスダックが1番成長しています。しかし、新興企業・ハイテク株は変動が激しいため、大幅な下落も考えられます。S&P500は安定性・成長性のバランスに優れた指数です。

世界の主要指数とS&P500のパフォーマンス比較

米国以外の国の主要指数を挙げると、FTSE 100(英国)、日経225(日本)、上海総合指数(中国)などがあります。

S&P500FTSE100日経225上海総合指数
米国英国日本中国
銘柄数500社100社225社約3,400社
選定する会社S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社FTSE ラッセル社日本経済新聞社上海証券取引所
算出方法時価総額加重平均
(時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい)
株価加重平均
(株価の高い銘柄の影響を受けやすい)
株価加重平均
(株価の高い銘柄の影響を受けやすい)
時価総額加重平均
(時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすい)
業種の傾向多様な業種をバランスよくカバー。米国経済全体の動向を反映。エネルギーと金融の比重が大きい。多くの国際企業が含まれているため、グローバル経済の影響を受けやすい。製造業と情報技術の比重が大きい。日本の経済構造を強く反映。中国の成長企業が多く含まれており、政府の政策や規制の影響を受けやすい。金融と工業の比重が大きい。
特徴包括的・米国市場の代表英国の大手100社の代表指数。グローバルな視点日本の大手225社の代表指数。アジア市場で重要中国の上海証券取引所全銘柄をカバー。中国市場を代表
配当金中程度高め低め低め
価格の変動中程度中程度中程度比較的大きい
過去5年間の成長率(2024年6月時点)+83.88%+12.7%+85.54%+6.8%

各国の指数は、為替レートの影響や地政学的リスク、経済政策の違いなどでパフォーマンスに差が生まれます。各国で比較すると米国が際立って高い成長率ですが、新NISAの影響で日本株も勢いがみえます。

S&P500への投資方法

S&P500株価指数は、株式そのものではなく、単なる銘柄リストです。直接投資はできません。個人投資家は「銘柄リストのS&P500を使って作られた金融商品」を購入しています。

S&P500に投資する代表的な方法は、投資信託、ETF(上場投資信託)の2つです

個別株と投資信託

個別株とは、ある1社の株を指します。任天堂、ソニーなど、その会社だけの株を指します。一方、投資信託は、福袋のように複数企業の株を詰め合わせた状態です。詰め合わせの中身を決めるときにS&P500のリストを参考にして、S&P500の金融商品が完成します。

投資信託とETF(上場投資信託)の違い

投資信託とETFは、どちらもS&P500を原型にした金融商品ですが、それぞれの仕組みと特徴に違いがあります。投資信託は、プロ(運用会社)にお金を払って、集まったお金をプロが運用する方式です。

投資信託は通常、証券会社や銀行を通じて購入します。価格は1日1回の基準価額で決定されるため、その日の終わりに取引が確定します。

ETF(上場投資信託)は、プロが運用した投資信託を証券化して株式市場で販売する方式です。ETFは株式と同じく証券取引所で売買され、リアルタイムで価格が変動します。株式市場が開いている時間中はいつでも売買が可能で、現在の市場価格で取引されます。

投資信託ETF
販売会社証券会社や銀行など東証などの証券取引所
価格変動1日に1回市場価格でリアルタイムに変動
最低投資金額100円程度~市場価格により数千円~数万円から
取引時間1日に1回市場があいている時間は常に取引可
売買形態長期投資向け短期売買も可能
積み立て投資可能可能

ETFと投資信託では、どちらが優れていて、どちらが劣っているというものではありません。

投資信託は長期的な投資に向いています。ETFはリアルタイムでの取引が可能なため、より柔軟に投資を行いたい人に向いています。

それぞれの特徴を理解し、自分の投資スタイルに合った商品を選ぶのが重要です。場合によっては両方を組み合わせるのも良い方法です。

» ETFと投資信託の違いを徹底比較!

日本でS&P500を原型にした金融商品を提供している会社

日本でS&P500を原型にした金融商品は多く存在します。代表的な商品は下記のとおりです。

三菱UFJ国際投信
【投資信託】eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
【ETF】MAXIS 米国株式(S&P500)上場投信
野村アセットマネジメント
【投資信託】はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500)
【ETF】NF・米国株S&P500ヘッジ有ETF
日興アセットマネジメント
【投資信託】インデックスファンドS&P500
【ETF】上場インデックスファンド米国株式(S&P500)
大和証券投資信託委託
【投資信託】iFree S&P500インデックス
【ETF】iFreeETF S&P500

個人投資家は、証券会社(例:楽天証券、SBI証券など)を通して上記の商品を購入できます。

まとめ

S&P500は、多様な業種をカバーした米国株式市場を代表する株価指数です。米国経済全体の動向を把握するための重要な指標となります。過去50年のデータでは、S&P500は年間平均で約7~10%の上昇率を示しています。

S&P500への代表的な投資方法は、投資信託とETF(上場投資信託)があります。

  • 投資信託:投資家から集めた資金を運用会社が運用する商品(長期投資向き)
  • ETF:投資信託を証券化したもので、株式市場で頻繁な売買可能(短期売買可能)

日本でも、三菱UFJ国際投信や野村アセットマネジメントなど、多くの金融機関がS&P500を原型にした金融商品を提供。日本の投資家も、証券会社(楽天証券、SBI証券など)を通してS&P500を原型にした商品を手軽に購入できます。

「S&P500関連商品の購入=成長が著しい米国経済の成長への投資」です。S&P500関連商品の積立投資をして、長期的な資産形成を目指しましょう。

» S&P500の利回りと投資戦略