つみたてNISAのデメリット完全ガイド|リスクと注意点を徹底分析

つみたてNISAのデメリット完全ガイド|リスクと注意点を徹底分析
  • つみたてNISAを始めたけれど、このまま続けて大丈夫?
  • 引き出すタイミングがわからない
  • デメリットや注意点を知りたい

つみたてNISAは、最大20年間分の利益を非課税で受け取れます。少額から始められるので、長期投資の手段として人気です。しかし、実際に始めると不安や疑問も出てきます。

この記事では、つみたてNISAのデメリットや引き出す際の注意点、適切な引き出しのタイミングについて詳しく解説します。記事を読めば、つみたてNISAのデメリットを理解した上で、より効果的に活用することが可能です。

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAは、株式投資で得た利益を非課税で受け取れる優れた制度です。しかし、以下のデメリットもあります。

  • 非課税枠が限られている
  • 積立投資に限定されている
  • 選べる投資商品が制限されている
  • 短期利益を狙えない
  • 損益通算や損失の繰り越しができない
  • 元本割れのリスクがある
  • 年間投資金額の上限が低い

デメリットを理解し、自身の投資目的や状況に合わせて適切に判断する力を身に付けましょう。

非課税枠が限られている

つみたてNISAの非課税枠には制限があります。年間の非課税枠の上限は40万円、20年間で最大800万円が上限です。年間40万円以上の積立投資をする場合、40万円を超えた部分は課税対象となるので注意が必要です。使わなかった非課税枠は翌年に繰り越せません。

つみたてNISAで非課税枠をフルに活用したい場合、1年間で40万円をきっちり埋める必要があります。非課税期間は最長20年間で、20年が経過した資産から順に、1年ごとに自動で課税口座に移行されます。つみたてNISAは非課税枠に制限があるため、上限額を超える潤沢な資産で投資計画を立てる際は物足りません

積立投資に限定されている

積立投資に限定されているのは、つみたてNISAの大きな特徴です。一括投資はできず、毎月の積立投資のみ可能です。

積立投資を行う際は、以下の制限があります。

  • 毎月の積立金額の上限がある
  • 積立頻度は金融機関のルールに従う
  • 積立日は金融機関の指定した日に限定される

積立金額の単位は金融機関によって異なり、100円から始められる場合もあります。年間40万円の枠をフルに活用するためには毎月33,333円の積立が必要です。積立頻度も金融機関によって異なり、毎日・毎週・毎月などから選択します。積立日は「毎月1日」「毎月27日」など金融機関が指定した日付に限定されます。

積立金額や頻度の変更、積立の一時停止も可能です。設定変更はほとんどの金融機関で翌月以降に反映されます。制限があるので、長期的な資産形成が可能です。時間分散の効果(※)も期待できる点が、定期的な積立投資の特徴です。

※ 時間分散の効果とは、定期的に同じ金額を投資して株価の上げ下げの影響を減らして、リスクが分散される効果です。一度に大金を投資するよりも安全に投資を続けられます。

選べる投資商品が制限されている

つみたてNISAは、投資初心者の保護と長期的な資産形成を促進する目的で、選べる投資商品が限られています。個別株は購入できず、金融庁が推奨するインデックス型(※1)の商品が中心です。アクティブ型(※2)の商品が少ないのも特徴です。運用の自由度が低く、積極的な売買による運用には向きません。
» インデックス投資とは?長期投資の秘訣

新興国や特定の業界に特化した商品が少なく、投資できる商品の幅が狭い特徴もあります。投資初心者にとって、あらかじめリスクの低い商品に限定されていれば、商品を簡単に選択することが可能です。リスクの少ない商品で積立投資を行えば、長期的に安定した資産形成ができます。
» インデックスファンドと投資信託の基本的な違い

※1 インデックス型とは、市場全体の動きを反映する指数に連動して運用する投資信託です。手数料が比較的安く、リスクを抑えて長期的な成長を目指すのに適しています。
※2 アクティブ型とは、専門家が市場平均を上回る利益を狙って積極的に運用する投資信託です。手数料が高めですが、より高いリスクを取ってインデックス型よりも高いリターンを狙えます。

短期利益を狙えない

つみたてNISAは長期投資を前提としており、短期的な利益を狙うのが難しい投資方法です。

具体的な特徴は以下のとおりです。

  • 頻繁な売買ができない
  • 市場の短期的な変動を利用できない
  • タイミングを選んで売買できない

売買の手続きに時間がかかるため、株価が急上昇したらすぐに売却して利益を確定させるような取引には向きません。相場の短期的な変動を予測して売買する手法も取りにくいです。短期的な値上がり益を狙う投資家にとっては、つみたてNISAは適しません。長期的な資産形成を目指す投資家にはメリットです。

損益通算や損失の繰り越しができない

つみたてNISAは、損益通算や損失の繰り越しができません。通常の投資口座では、利益と損失を相殺して税金を計算できます。つみたてNISA口座で生じた損失は、税務上ないものとみなされるため、相殺できません

以下は、各口座で利益と損失が発生した場合の課税される利益の例です。

ケース1ケース2ケース3
通常の投資口座Aの損益+100万円+100万円-50万円
通常の投資口座Bの損益-50万円0円0円
つみたてNISA口座の損益0円-50万円+100万円
課税される利益部分50万円100万円0円
各口座で利益と損失が発生した場合の課税される利益

ケース1では、投資口座AとBを合算して利益が50万円となり、50万円に対して20.315%が課税されます。ケース2の場合、Aの口座で100万円の利益が出ていますが、つみたてNISA口座の損失を合算できません。100万円の利益に課税されます。ケース3では、Bの口座では利益が出ていないため、課税されません。

元本割れのリスクがある

株式投資には元本割れのリスクがあります。元本割れとは、評価額が投資した金額を下回ることを指します。元本割れが起こる主な理由は、株価や為替レートの変動です。市場の状況によっては、短期間で大きく値下がりする可能性があります。

経済危機や企業の業績悪化により、株価が急落する可能性もあります。比較的安定しているインデックス投資でも、市場全体の長期的下落などで一時的に元本割れを起こす可能性はゼロにできません。市場は長期的に上昇傾向にあるため、投資期間が長くなるほど、リスクを軽減できます。

年間投資金額の上限が低い

つみたてNISAで1年間に投資できる上限金額は40万円です。一般NISAの年間120万円と比べて低い金額で、月々の積立額は最大33,333円です。上限金額を超えて投資信託を運用する場合は課税口座での運用となり、利益に税金がかかります

投資初心者やリスクを抑えて投資を始めたい方にとっては、上限金額は過剰な投資の予防につながります。株価の急落で資産が目減りしても、少額の投資であれば下落幅が小さく、恐怖を感じにくいです。上限金額は投資信託を長期保有するメンタルをサポートし、ろうばい売り(※)を防ぐ役割を果たします
» つみたてNISAとは?

※ ろうばい売りとは、株価が急落した際に投資家がパニックで一斉に株を売却することです。

つみたてNISAを引き出すデメリット

つみたてNISAを引き出す際には、以下の点に注意してください。

  • 複利効果が得られない
  • 元本割れのリスクがある
  • 申込日と約定日が異なる
  • 現金化に数日から1週間かかる

デメリットをよく理解した上で引き出すタイミングを検討しましょう。

複利効果が得られない

つみたてNISAから資金を引き出すと、以降は複利効果(※)が得られません。複利効果は長期投資における大きな利点です。長期投資では、時間とともに資産が成長します。しかし、資金を引き出してしまうと、効果が途切れます。

引き出した資金をすぐにつみたてNISAに戻そうと考えても、戻せるのは年間の上限金額の範囲内までです。再度、1から毎月の積立を行う必要があります。資金を頻繁に引き出していると、長期投資の利点である複利の効果を活かせず、資産成長の機会を逃します。

引き出しが早期であればあるほど、長期的な複利効果の恩恵を受けられません。複利効果は時間をかければかけるほど大きな力を発揮します。可能な限り資金を引き出さず、できるだけ長期間の保有を目指しましょう。

※ 複利効果とは、利益が利益を生む仕組みです。100万円の資産が10%上昇した後に、追加で10%上昇すると利益の10万円にも反映され、資産は121万円です。

元本割れのリスクがある

株式投資の代表的なリスクが元本割れです。元本割れが起こる主な理由は、株価や為替レートの変動です。突発的な経済危機や、不況による企業の業績悪化により、株価が一時的に急落する可能性があります

各企業の株に分散されているインデックス投資でも、市場全体の大幅な下落により元本割れが起こる可能性があります。市場は長期的に上昇傾向にあるため、長期の投資を続ければ、リスクは大幅に減らすことが可能です。

申込日と約定日が異なる

売買の注文をした「申込日」と、実際に売買が成立する「約定日」は申込の時間や金融機関、購入した商品によって異なります。投資信託は通常、注文を出した翌営業日または翌々営業日以降に約定される場合が多いです。

申込日と約定日の間で市場価格が変動するので、想定していた価格で確実に売却できるわけではありません。市場が急激に変化している中でつみたてNISAを引き出す場合、想定していた金額よりも安く売却される場合があります。逆に、想定よりも高い金額で売却される可能性もあります。

つみたてNISAからの引き出しを検討する際は、注文日と約定日の時間差を考慮に入れましょう。

現金化に数日から1週間かかる

投資信託を売却してから実際に現金を受け取るまで、数日から1週間程度の時間がかかります。株式市場の仕組みや手続きの都合によるものです。

具体的には以下の流れで入金されます。

  1. 売却注文する
  2. 売買が約定される
  3. 受渡日に証券口座に入金される
  4. 証券口座から出金し、銀行口座に入金される

受渡日には証券会社の口座に入金されますが、銀行口座への出金手続きが必要です。出金手続きにも1〜3営業日程度かかります。

急いでお金が必要な場合は、証券会社に具体的な日程を確認しましょう。あらかじめお金が必要なタイミングがわかっている場合は、余裕を持って引き出しの計画を立ててください。突然の出費に備えて、常に一定額の現金を手元に置いておくのも良い方法です。

つみたてNISA引き出すタイミングの考え方

つみたてNISAから資金を引き出す最適なタイミングは人によって異なります。通常の株式投資でも、売るタイミングが最も難しいと言われているほどです。適切なタイミングで引き出すために、ルールの設定や専門家への相談などを検討しましょう。

ルールを設定しておく

株の売買タイミングに正解はないため、正解の代わりになるルールを自身で作りましょう。ルールを守れば、感情的な判断を避けられ、適切なタイミングで引き出せます

以下のルールを参考にしてください。

金額のルールを設定する
金額のルールを1,000万円と設定すれば、達成まで感情的な判断をせずに済みます。モチベーション維持のため、達成金額で何を買うかあらかじめ決めておくのもおすすめです。
投資期間のルールを設定する
投資期間のルールを20年と設定すれば、途中で市場が下落してもろうばい売りをせずに積立を続けられます。市場の変動に惑わされず、福利効果でより多くの資産を築ける可能性が高まります。
現金が必要なタイミングで引き出すルールを設定する
緊急で現金が必要なときに必要な分だけ引き出せるルールを作りましょう。

ルールを設定すれば、一時的な市場の変動に惑わされず、より冷静な判断が可能です。ルールを達成したタイミングで資金を引き出せば、資金を人生設計に組み込みやすいメリットもあります。

ルールを厳格に守りすぎるのも注意が必要です。個人の財務状況の変化や、予期せぬ出来事が起こる可能性もあるため、ある程度の柔軟性を持たせましょう

専門家に相談して考える

ファイナンシャルプランナーや投資アドバイザーのような専門家への相談も、引き出しタイミングを決める方法の1つです。

専門家への相談は、以下のメリットがあります。

  • 財務状況や将来の目標を考慮しながら、適切なアドバイスを提供してくれる
  • 現在の市場動向や経済情報を踏まえた判断ができる
  • リスク許容度や積立期間を相談しながら決められる
  • 引き出しに伴う税金や手数料の影響を正確に計算できる

専門家のアドバイスを受ければ、より合理的な決定が可能です。しかし、最終的には自身で判断しましょう。専門家の意見を参考にしつつ、自身の状況に最適な選択が大切です。

つみたてNISAの引き出しに関するよくある質問

つみたてNISAの引き出しについて、よくある質問を以下にまとめました。

  • 一部でも引き出せる?
  • 引き出しで手数料や税金はかかる?
  • 新NISAの非課税枠はどうなる?

一部だけでも引き出せる?

つみたてNISAの資金は、一部だけの引き出しが可能です。残りの資金は継続して非課税で運用できます。引き出しの回数に制限はなく、引き出し額の最低限度もありません。引き出すタイミングも自由に選べます。

一部の引き出しを行う際は慎重に検討しましょう。長期投資における複利効果のメリットを考慮し、本当に必要な場合のみ、引き出すことがおすすめです。

引き出しで手数料や税金はかかる?

つみたてNISAを証券口座から銀行口座に引き出す際に、手数料はかかりません。売却の際には、手数料がかかる場合があるので金融機関に確認しましょう。

非課税期間内の引き出しに税金はかかりません。しかし、非課税期間終了後の引き出しは課税対象です。運用益がある場合、利益に対して課税されます。元本割れしている場合は課税されません。

新NISAの非課税枠はどうなる?

新NISAの非課税枠は、つみたてNISAとは別枠が用意されます。

以下が新NISAの上限金額です。

つみたて投資枠成長投資枠つみたて投資枠+成長投資枠
年間の上限金額120万円240万円360万円
合計の上限金額1,800万円1,200万円1,800万円
新NISAの非課税枠

新NISAでは、年間の上限金額まで投資を行った場合、翌年につみたて投資枠と成長投資枠が復活します。非課税枠の限度は総額で1,800万円です。つみたて投資枠だけで1,800万円を埋めると、成長投資枠には投資できません。成長投資枠の上限1,200万円を埋めた場合、つみたて投資枠は600万円が上限です。
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新NISAでは投資信託や上場株式、ETFやREITなどに投資できます。選択肢が広がり、より柔軟な運用が可能になりました。新NISAは旧つみたてNISA口座とは別の口座として新たに設けられます。
» ETFと投資信託の違いを徹底比較!

まとめ

つみたてNISAにはさまざまなメリットがありますが、いくつかのデメリットもあります。非課税枠や投資商品の制限、短期利益を狙えないことや損益通算ができないこと、元本割れリスクなどです。引き出しに関しても複利効果が失われる可能性や、現金化に時間がかかるデメリットがあります。

適切なタイミングで引き出すためには、あらかじめ自身でルールを設定してください。専門家の意見を参考にするのも有効な手段です。一部だけの引き出しも可能ですが、複利効果が停止してしまうデメリットがあります。引き出し時の手数料や税金が気になる場合は、事前に確認しましょう。
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