老後の生活資金や子どもの教育資金をどうやって準備すれば良いのか、投資制度の選び方に悩む方は多いです。新NISAやiDeCoは投資の税制優遇がありますが、違いやメリットについて理解している方は少ないです。
この記事では、新NISAとiDeCoの基礎知識、違いを比較、活用方法などを解説します。記事を読むと、自分に適した投資制度を選び、効率的な資産形成を始められるようになります。新NISAとiDeCoの違いを理解して活用し、将来の資産形成を行いましょう。
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新NISAとiDeCoの基礎知識
将来の資産形成や老後の資金計画のために、投資に興味を持つ人は増加しています。税制優遇制度で日本の代表的な投資は新NISAとiDeCoがあります。新NISAとiDeCoは、個人の資産形成を支援する重要な制度です。両制度とも税制優遇があり、長期的な視点で資産形成を行うのに適しています。
≫ 日本証券業協会(外部サイト)
≫ 厚生労働省(外部サイト)
新NISAとiDeCoの基礎知識として以下を解説します。
- 新NISAとは少額投資非課税制度
- iDeCoとは個人型確定拠出年金
- 新NISAとiDeCoの共通点
制度の詳細や利用条件は異なるので、自分の状況に応じて適切に選択しましょう。
新NISAとは少額投資非課税制度
新NISAは、2024年1月から始まった新しい少額投資非課税制度です。NISA口座で購入した株式や投資信託の運用益が非課税となるため、投資初心者や若年層に有利な制度です。新NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠で構成されています。
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新制度の概要は以下のとおりです。
制度 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
制度実施期間 | 恒久化 | 恒久化 |
年間投資上限額 | 120万円 | 240万円 |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した投資信託 (金融庁の基準を満たした投資信託に限定) | 上場株式 投資信託 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
2024年から制度が改正され、成長投資枠とつみたて投資枠が併用可能となりました。非課税保有期間が無期限になり、年間投資上限額が拡大されたことで、より注目を集めています。
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つみたて投資枠は年間120万円まで、長期・積立・分散投資に適した商品が対象です。一方、成長投資枠は年間240万円まで、幅広い金融商品が対象となっています。18歳以上の日本の居住者が利用でき、非課税のメリットを生かした長期投資を促進することが目的です。
新NISAを利用することで、投資初心者でも無理なく長期的な資産形成を始められます。ただし、投資にはリスクもあるので、自分の経済状況や投資目的をよく考えてから始めましょう。
» 新NISAの成長投資枠とつみたてNISAの違いを解説!
iDeCoとは個人型確定拠出年金
iDeCoは、個人型確定拠出年金の略称で、老後の資産形成を目的とした私的年金制度です。iDeCoは加入者自身が運用商品を選択し、積立投資を行います。
iDeCoのメリットは、以下のとおりです。
- 運用益が非課税である
- 掛け金が全額所得控除になる
- 受け取り時に税制優遇がある
iDeCoの特徴は、税制優遇があることです。掛け金の全額が所得控除で運用益も非課税になるため、効率的な資産形成ができます。20歳以上65歳未満のほぼすべての国民が加入対象になります。ただし、毎月の掛け金の上限は職業によって異なります。
60歳から受給可能ですが、原則60歳までは引き出しできません。iDeCoは金融機関を通じて、申し込みと運用を行えます。自分のライフプランに合わせて、長期的な視点で資産形成しましょう。
新NISAとiDeCoの共通点
新NISAとiDeCoには多くの共通点があります。両制度とも、長期的な資産形成を支援する目的で設計されています。
具体的な共通点は以下の5つです。
- 税制優遇
- 自己責任での運用
- 金融機関での口座開設
- 運用益の非課税措置
- 資産形成・老後対策
新NISAとiDeCoはどちらも資産形成を後押しする政府が推進する制度です。新NISAやiDeCoの制度を活用することで、将来に向けた効果的な資産運用が期待できます。
新NISAとiDeCoの違いを比較
新NISAとiDeCoは、税制優遇を受けられる投資制度ですが、重要な違いがあります。
主な違いは、以下の5つです。
- 加入資格
- 投資対象
- 運用期間
- 税制優遇
- 投資上限額
新NISAとiDeCoの違いを理解することで、自分に合った投資方法を選択できます。目的や状況に応じて適切な制度を選択することが大切です。
加入資格
新NISAとiDeCoの加入資格の違いは、以下のとおりです。
- 新NISA:18歳以上
- iDeCo:20歳から65歳まで(条件による違いあり)
新NISAは、18歳以上の日本居住者なら誰でも利用でき、年齢の上限がありません。一方でiDeCoは、年齢制限があり、国民年金に加入しているかどうかがポイントです。2022年の法改正により、厚生年金の被保険者や国民年金に任意で加入している場合、65歳まで利用できるようになりました。
会社の確定拠出年金に加入している方で、iDeCoも利用したい場合は、会社の承認が必要です。新NISAとiDeCoでは加入資格が異なります。自分が加入資格者であるか確認しましょう。
投資対象
新NISAとiDeCoでは、投資できる対象が異なります。
新NISAとiDeCoの投資対象の違いは、以下のとおりです。
新NISA | iDeCo |
つみたて投資枠:長期の積立・分散に適した投資信託 | 元本確保型商品 |
成長投資枠:国内外の株式、投資信託、上場株式など | 投資信託 |
新NISAのつみたて投資枠は、金融庁が定めた基準を満たしている投資信託が対象になります。成長投資枠に関しては、国内外の株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)に投資可能です。iDeCoでは、投資信託に加えて、元本確保型商品も選択できます。
新NISAでは、元本確保型商品の選択はできません。リスクを最小限に抑えたい場合は、iDeCoの元本確保型商品を選択する方法もあります。ただし、低金利の状況では、資産が増えにくい点がデメリットとしてあげられます。自分の投資目的や運用スタイルに合わせて、新NISAかiDeCoを選びましょう。
運用期間
新NISAとiDeCoの運用期間は大きく異なります。新NISAとiDeCoの運用期間の違いは、以下のとおりです。
- 新NISA:無期限
- iDeCo:原則65歳まで
新NISA制度の運用期間は、無期限です。iDeCoは2022年5月から、原則65歳まで運用できるようになりました。新NISAとiDeCoの特徴の違いとして、新NISAは途中で引き出せますが、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。
iDeCoで積み立てるお金は、老後資金として使用することが目的です。老後資金のために投資をする場合、途中で引き出せないことがメリットと言えます。新NISAは比較的自由度が高く、iDeCoは老後のための資産形成に特化しているのが特徴です。
自分のライフプランに合わせた選択をおすすめします。
税制優遇
新NISAとiDeCoは、どちらも税制優遇が受けられる制度です。
新NISAとiDeCoの税制優遇の違いは以下のとおりです。
- 新NISA:運用益が非課税
- iDeCo:運用費が非課税、拠出金が全額所得控除
一般的に、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、新NISAとiDeCoは税金がかかりません。投資で得た利益が100万円の場合、約20%である20万が差し引かれて、残りの80万円が手元に残ります。新NISAとiDeCoでは運営益に対して税金がかからないため、投資で得た利益100万円が手元に残ります。
iDeCoは運営益に加えて、拠出金が全額所得控除になるため、住民税と所得税の負担が軽減されます。節税効果の点においては、新NISAよりもiDeCoの方が優秀と言えます。子どもの教育資金の補填が投資目的の場合は、節税効果が高いと言ってもiDeCoの投資目的と合致しません。
新NISAとiDeCoのどちらを利用するかは、自分の目的や状況に合わせて、適切に選択する必要があります。
» 税制優遇をフル活用!NISAの税金がかかるケースはどんなとき?
投資上限額
新NISAとiDeCoの拠出上限の違いは、以下のとおりです。
新NISA | iDeCo | |
---|---|---|
年間投資枠 | つみたて投資枠:120万円 成長投資枠:240万円 計:360万円 | 加入条件によって変動 14万4,000円~81万6,000円 |
生涯投資枠 | 1,800万円(成長投資枠1,200万円) | 制限なし |
新NISAの年間投資額は、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて360万円です。iDeCoの年間投資額は、加入者によって変動があり、14万4,000円~81万6,000円と年間投資額に幅があります。年間投資額でみると、新NISAの方がiDeCoよりも多く投資可能です。
しかし、新NISAの生涯投資額が1,800万円に対して、iDeCoには制限がありません。自営業者の場合、iDeCoの年間投資上限額は81万6,000円です。年間81万6,000円を23年間継続すると、生涯投資額は1,876.8万円となり、新NISAよりも投資額が増えます。
会社員の場合、iDeCoの年間投資上限額は27万6,000円です。20~65歳までの45年間、年間投資上限額を投資した場合、生涯投資額は1,242万円です。会社員の場合は年間投資額、生涯投資額ともに新NISAの方が大きくなります。
新NISA、iDeCoともに、投資上限の範囲内であれば自由に投資可能です。上限いっぱいに活用すると効果的な資産形成が期待できますが、リスクも大きくなります。個人の状況や目的に応じて、適切な投資額を検討することが重要です。
» 新NISAの年間投資上限額と非課税保有限度額を解説!
新NISAとiDeCoはどっちがいい?
新NISAとiDeCoは、資産形成に役立つ制度ですが、どちらが良いとは一概には言えません。新NISAとiDeCoのどちらを利用するかは、個人の状況や目的によって変わります。
新NISAとiDeCoのどちらを選ぶかについて以下を解説します。
- 若い世代から始めるなら新NISA
- 老後資金のために積み立てるならiDeCo
- 目的に応じて選ぼう
新NISAとiDeCoのどちらを利用するとしても、目的、年齢、リスク許容度を考慮して選択することが大切です。
若い世代から始めるなら新NISA
若い世代から始めるなら、新NISAがおすすめです。若い世代から始めると、複利(※)の効果を最大限受けられます。
運用期間の違いによる資産額は以下のとおりです。
投資期間 | 20歳から50歳まで30年間投資 | 30歳から50歳まで20年間投資 |
毎月積立金額 | 1万円 | 1万円 |
投資期間 | 30年 | 20年 |
運用利回り | 5% | 5% |
投資元本 | 360万円 | 240万円 |
運用資産額 | 832万円 | 411万円 |
毎月同じ積立金額、運用利回りの場合でも、積立期間が10年間変わると、運用資産額に約400万円の差が生まれます。複利の効果を最大限利用するためには、早期に投資を始めることが重要です。大手ネット証券であれば、100円から投資可能です。まとまった資金がなくても、利用できる点もメリットと言えます。
長期的な投資は、市場の変動を安定させる効果があり、リスクを抑えながら安定した資産形成が期待できます。株式市場は短期的には変動が激しいですが、長期的には上昇傾向です。スタンダードな国際分散投資を20年続けた場合、元本割れをしないデータもあります。
≫ 金融庁(外部サイト)
新NISAは長期的な視点で資産を育てたい若い世代にとって、有効な選択肢の1つと言えます。自由度が高いので、自身で投資先を選びたい人や株式投資に興味がある人におすすめです。しかし、投資にはリスクがあるので、十分な知識を身につけてから始めてください。
※ 複利とは、元本に生じた利子を次の期間の元本に加えて計算し、利息にも利子が付き、雪だるま式にお金が増えることです。
老後資金のために積み立てるならiDeCo
老後資金のために積み立てる場合は、iDeCoがおすすめです。iDeCoは老後資金の積立に計画性を持たせられます。iDeCoは、原則60歳まで引き出せません。
老後資金の補填が目的である場合、引き出せないことがメリットになる理由が2つあります。
- 急な出費に使用することがない
- 老後資金の計画が立てられる
新NISAのように途中で引き出せると、急な出費に使用したり、株価が暴落した際に積み立てをやめたりするケースもあります。iDeCoを利用すると、老後資金の計画も簡単です。老後資金が2,000万円必要な場合、毎月2万円を35年間、運用利回り5%で続けると、運用資産額は約2,272万円です。
年利5%は高リスクの商品を避けて、分散投資で長期運用すれば、決して不可能な数値ではありません。老後の資金準備を考えている方にとって、iDeCoは有効な選択肢と言えます。
目的に応じて選ぼう
新NISAとiDeCoは、特徴の異なる投資制度です。
特徴を考慮すると以下のとおりです。
- iDeCo:老後の資金作りを目的とする場合
- iDeCo:所得控除で節税したい場合
- 新NISA:老後資金以外の使用を目的とする場合
iDeCoは老後資金作りに適していますが、新NISAでも老後資金作りはできます。途中で引き出さない意志がある場合は、年間投資額が大きい新NISAの方が適しています。どちらを選ぶべきかは、自分の目的や状況をよく考え、適切な投資方法を選ぶことが大切です。
新NISAとiDeCoの併用
新NISAとiDeCoは併用可能であり、併用することで投資の幅が広がり効果的な資産形成ができます。
新NISAとiDeCoの併用について以下を解説します。
- 併用が可能な理由
- 併用するメリット
- 併用する場合の注意点
各制度の特徴を理解し、自分の状況に合わせた配分が重要です。
併用が可能な理由
新NISAとiDeCoの併用は、制度上の制限がないため可能です。両制度の特徴や目的が異なるので、お互いを補完し合う形で利用できます。
以下の理由から併用が可能です。
- 制度の目的の違い
- 投資対象と運用期間の違い
- 税制優遇の仕組み
違いを理解して生かすことで、より効果的な資産形成が可能です。新NISAは比較的自由度の高い投資が可能で、iDeCoは老後資金の確保に特化しています。
新NISAとiDeCoを併用することで、リスク分散と資産形成の選択肢が広がります。短期的な資金運用から長期的な老後対策まで、幅広い資産形成戦略を立てられることが大きな魅力です。
併用するメリット
新NISAとiDeCoを併用することで、税制優遇を最大限に活用できるようになり、より効率的な資産形成が可能です。
新NISAとiDeCoを併用すると以下のメリットがあります。
- リスク分散
- 異なる投資目的への対応
- 長期的資産形成と退職後資金確保の両立
- 投資選択肢の拡大
新NISAとiDeCoの制度を併用すると、バランスのよい投資戦略を立てられ、経済状況の変化にも柔軟に対応できます。制度の特徴をよく理解し、自分の状況に合わせて適切に活用することが重要です。
併用する場合の注意点
新NISAとiDeCoを併用する際の注意点は、以下の4つがあります。
- 収入や資産状況に合わせて行う
- 運用商品の重複を避ける
- ポートフォリオの分散を意識する
- 税制優遇の違いを考慮する
両制度の拠出上限を把握し、合計額が自分の収入や資産状況に見合っているか確認することが大切です。家計の見直しや倹約は大切ですが、無理な投資は生活を苦しくします。無理のない範囲で投資を行うことが長期的な資産形成には重要です。
定期的に運用状況を確認し、必要に応じて資産配分を見直すことも大切です。将来の生活設計や資金ニーズの変化に合わせて、運用方針を調整する必要があります。難しい場合は、専門家のアドバイスを受け、適切に情報収集しましょう。正しい知識を持ってそれぞれの制度を活用することで、より効果的な資産形成ができます。
まとめ
新NISAとiDeCoは、異なる特徴とメリットを持つ、個人の資産形成を支援する制度です。どちらを選ぶか、あるいは併用するかは、自分のライフステージや投資目的に応じて決める必要があります。
一般的な基準は、以下のとおりです。
- 新NISA:老後資金以外で使用目的がある場合
- iDeCo:老後資金の積み立てが目的の場合
加入資格や投資対象、運用期間、税制優遇、拠出上限にも違いがあるため、目的に合わせて選択する必要があります。両制度を併用することで、税制優遇を最大限に活用できるため、より効率的な資産形成が可能です。一方で、無理な投資は生活を苦しくします。無理のない範囲で投資を行うことが長期的な資産形成には重要です。
自分の状況や目標に合わせて、新NISAとiDeCoの最適な活用方法を検討しましょう。制度を上手に利用することで、将来の資産形成に役立てられます。